理事長の〝ちゃべちゃべ〟 日記  〜その3〜

元ちゃんハウス日記
自分らしく生きるを、自分に問う日

このメールマガジンは6月1日の11時に配信されています。6年前の今頃は、夫が31日の夜に亡くなったので悲しむ暇がないほど葬儀の準備などでばたばたしていたことを思い出します。今回も夫の話になります。

今、一生懸命、闘病されている方にとって、亡くなった人の話を聞くのは辛いかもしれません。その様な方は、どうぞスルーしてくださいね。ただ、今、私が思うのは”死”を余りにも忌み嫌い怖がると、大切な、今を生きている”生”を思う存分楽しめない様な気がしています。普段通り、自分らしく生きる続きのどこかで、その日が来るという風に思った方が楽なのではないかなと思っています。

夫の時もそうでした。今日が一番良い日!と思って日を重ねて、結果、31日に逝きました。今、ACPとか人生会議が大切!自分らしく!と言われますが、夫はそれを実行していたと思います。闘病中の講演で「残りの自分の人生の目標として・何か他人の役にたちたい!・何かを残したい!」と言っていました。そして患者と医療者のずれを減らすことが使命と、講演や執筆活動を通して自分の思いや経験を多くの人に伝え、形のあるものとしては「元ちゃんハウス」を「自分が生きた証し」として残して逝きました。


夫は一人っ子だし、2人の子どもは東京なので、同居する家族は私だけ。今の住まいには、子どもが大きくなってから引っ越してきたので、これまでは近所づきあいなどもほとんどなかったのです。私たち夫婦は「家族力」と「地域力」に乏しい現代人の典型といえるかもしれません。もしかしたら、私一人で夫の闘病を支えなくてはならなかったかもしれない。そうならずにすんだのは、「元ちゃんハウス」があって、そこに仲間がいたからです。夫が亡くなるぎりぎりまで望み通りの暮らしが送れたのも、「元ちゃんハウス」のおかげです。


また、夫は病院勤務の外科医としての繋がりに加えて、特に金沢赤十字病院へ行ってからは地域の先生方や、広く色々な方々と繋がらせて頂いたと思います。そんな中、夫と同じ2015年に急性白血病と診断され、同じく2017年5月に亡くなった、医療法人社団ささえる医療研究所(北海道岩見沢市)理事長である村上智彦先生という素晴らしい先生と闘病同志となったことで、辛い中にも喜びや心強さや励ましを持てました。


私達夫婦だけの闘病では、がんとむき合いながら、もがきながら、二人だけの語りの、細いひょろひょろの木だったでしょうが、村上先生はじめ素晴らしい先生方のお言葉が、がんになった意味を考え、落としどころをつけるための枝葉をつけて下さり大きな樹となっていくように感じました。二人では気づけない意義付けをしてくださって改めて救われる思いでした。


夫の場合、がんになっても住み慣れた大好きな金沢の町で最後まで自分らしく生きるには、患者になった医師としての役割意識と、キャンサーギフトだと実感できた元ちゃんハウス作りの活動と仲間たち、そして一緒に闘病して同じ5月に亡くなった村上智彦先生と、二人の医師の闘病を支えてくれた方々がいてくれることが絶対に必要でした。改めて支えてくださった方々に感謝します。恩返しができなかった夫に代わって今度は私が、元ちゃんハウスの利用者の皆さまに恩を送っていきたいと思います。

(2023年6月1日)

元ちゃんハウス西村詠子理事長

元ちゃんハウス 理事長
西村詠子

コメント

  1. 菊池なほみ より:

    こんにちは
    そして初めましてとなります。
    先日NHKシンポジウム配信を拝見しました。皆さんの一つ一つの言葉がとても身にしみております。沢山のギフトをいただき感謝申し上げます。

    ふと今まで出会った患者さんやご家族を思い出し医療現場の中にどっぷりつかっていた頃の自分に何が出来たのだろうと自問自答してしまいました。現場を離れて1年地域における自身の役割は何かを改めて考える機会となりました。
    「患者さんの一番近くにいて本当の想いを汲み取れる看護師」どこにいても変わらない想いで関わり続けたいと思います。

    • 西村詠子 より:

      菊地さま、素敵なコメントありがとうございます。活動の大きな力になります。これからも、患者さん達に、ともにいることを許してもらえるように、少しでも肩の荷を下ろすことが出来るような場を作って行きます。今後ともどうぞよろしくお願いします。

      • 菊池なほみ より:

        コロナ感染症の発生に伴い感染防止の観点から思い通りの最期を過ごせない人は多く面会一つとっても満足にできない状況でした。
        しかし、一人一人の命に向き合っている立場から見ると、その「一」(いち)がとにかく重要だと気付かされました。その「一」という数字の背景には、一人の命・一人の人生そしてその人と家族の声を繋ぐことは、みんなの命を救うことに繋がると思いました。
        誰もがみんな命綱。私もその一つになりたいし、誰かを笑顔にできたらもっといいと思います。
        “人生に目標を持ち一日一日を大切に”この言葉を受け止め日々を生きたいですね。