理事長の〝ちゃべちゃべ〟 日記  〜その39〜

元ちゃんハウス日記
今月のキーワードは「希望


5月最後の土日は、私にとって学びと気づきに満ちた時間となりました。

30日は米森さんと一緒に富山へ行き、「Dr.カキゾエ 歩く処方箋 ~みちのく潮風トレイルを往く~」を鑑賞してきました。金沢では上映がなかったため残念に思っていましたが、富山のほとり座で垣添忠生先生のトークショーも開催されると知り、嬉しくて会いに行ってきました。

垣添先生は日本対がん協会会長として、今年度の「もくれんプラス」の助成や元ちゃんハウスの活動を応援してくださっています。
8年前、がんサバイバー支援のために福岡の九州がんセンターから札幌の北海道がんセンターまで、全国を歩かれた際にも元ちゃんハウスに立ち寄ってくださいました。久しぶりにお会いした先生は変わらずお元気で、そのお姿にまず驚かされました。

今回の旅は、東日本大震災の被災地に心を寄せながら、みちのく潮風トレイル1025キロを歩くものでした。82歳とは思えない健脚で、黙々と歩き続ける先生の姿からは、多くを語らずとも強い意志が伝わってきました。ところどころで詠む俳句も素敵でした。

垣添先生はご自身もがんを経験され、さらに最愛の奥様を亡くされたご遺族でもあります。
その人生を背負いながら歩き続けるお姿は本当に胸を打つものでした。奥様との思い出の地を訪ねる場面では、胸が熱くなりました。美しい景色の一方で、険しい坂道や岩場、長い階段を歩く様子を見ると、その大変さが伝わってきます。実際に足を痛められたそうですが、それでも歩みを止めない。
その姿から、「生きることとは歩き続けることなのかもしれない」と教えられた気がしました。
先生は「トンネルの向こうの明るい光が希望じゃなくて 闇の中で手すりとか手とか使い一歩一歩踏みしめながら 前に半歩ずつでも進んでるっていうその感触が希望っていうんじゃないかなって」とおっしゃっています。

そして31日は、重田雅弘先生による認知症セミナー「アルツハイマー型認知症の人との対話 ~認知症の人と家族の『苦悩と葛藤』に学ぶ~」に櫻井さんと一緒に参加しました。

重田先生はとても温かな笑顔が印象的で、「診察」よりも「対話」を大切にされている先生でした。
言葉だけではなく、表情やしぐさなどのノンバーバルなメッセージにも耳を傾け、その人の思いを受け取ろうとされる姿勢に深く共感しました。改めて、傾聴の大切さと、人の話を聴くときの心構えを学ばせていただきました。

また、認知症になった方やご家族の心の変化、そしてその対応の仕方はがんになった時と同じだと思いました。人は絶望の中にあっても、少しでも希望を見つけながら前に進もうとする存在なのだと思います。

重田先生は「未来を見ているうちは絶望から抜け出せない。(完治も治癒もない・・)今に眼差しが向いた時、希望が射す」とお話しされました。その言葉が心に残りました。

振り返ってみると、この二日間だけでも何度も「希望」という言葉に出会いました。垣添先生の映画にもHOPE希望があり、重田先生のお話にも希望がありました。先日23日にもくれんぷらすでお話を伺った島薗進先生も、キューブラー・ロスの死の受容プロセス5段階の中にもが最後まで「希望」はあるとおっしゃっていました。

最近の私の中のキーワードは「希望」です。大きな希望でなくてもいい。
その人なりの希望を持てること、そしてその希望を仲間と分かち合えることは、とても幸せなことだと思います。

元ちゃんハウスでも、患者さんやご家族がそれぞれの希望を見つけ、少しでも前を向いて歩んでいけるよう、その思いに耳を傾けていきたいと思います。

(2026年6月4日)

元ちゃんハウス西村詠子理事長

元ちゃんハウス 理事長
西村詠子