7月末の土曜日は北國新聞赤羽ホールで開催されている書家 阿部豊寿さんの個展に行ってきました。能登半島地震復興支援を願っての開催です。
阿部さんはみんなが記念撮影に持つ『元ちゃんハウス』の字を書いてくださった方ですし、元ちゃんハウス恒例の新年の書初め、揮毫の先生です。
阿部さんはこれまでもずっと能登と繋がり、能登や高岡など各地のお寺や神社に奉納揮毫されています。そんな阿部さんだからこそのメッセージがありました。これまでの作品や今回の能登半島地震を受けて新たに書かれた作品などが一堂に展示されていました。会場にはたくさんの方が見に来られていましたが、一瞬だけ、誰もいなくなった瞬間がありました。会場で迫力のある作品に独りで囲まれたその時、感動なのかなんなのかわからないけれど自然に泣けてきました。涙が止まらなくなりました。そんな私に阿部さんは「気合を入れたから‥」と個展を開催するにあたっての真剣な想いを伝えてくださいました。そんな想いが伝わり、未だに続く能登の皆さんの大変な状況を思い浮かべて言葉にならない感情でした。
この書展を通し、能登の素晴らしさを共有し、被災地や皆様にとって明日への活力に繋がればとの思いで書かれたという「創造的復興」の作品。
元ちゃんハウスでもまだ、いろいろな地域での縁を繋いで、能登への支援物資を受け取り、仕分けをしています。作品の中にある「寄り添う心を持ち元気な能登になるまで支え合い一歩一歩前進していきたい」という言葉を改めて受取りたい思います。
元ちゃんハウスと阿部豊寿さんとの繋がりは、実は前理事長の夫と豊寿さんのお母様の雪寿さんとの繋がりから始まっています。夫が病気になる前から雪寿さんと出会って書も書いていただいておりました。お母様と息子さんの2代にお世話になっているわけです。
病気の前に夫が書いていただいた言葉は「野心」「克己」です。
言葉の意味は、
野心・・密かに抱く大きな望み、新しいことに挑戦する気持ち
克己・・自分の欲望や邪念にうちかつこと
だそうです。
夫はもっともっと、医師としての仕事で頑張りたいと思っていたのだと思います。
書いていただいた順番はわかりませんが、「挑戦」「克」の書もあります。
そして病気になってから書いていただいたと思う書は「克服」「隨縁」です。
言葉の意味は
克服・・努力して困難にうちかつこと
隨縁・・縁に従うこと(仏語) 良い時も悪い時も流れに任せてあるがままに生きるという善の境地(禅語)
だそうです。
決して自分の胃癌が治らない、とわかっていても少しでも生きる時間を長らえるためにすべての治療を受けて頑張っていた夫、でもその反面、生前からもよく言っていましたが、「しかたない・・」という言葉で受け入れていた夫。どんな気持ちで書いていただいたのか?どんな想いを込めたのか?悲しいですが今はもう、尋ねる事も出来ず想像するしかありません。 夫の想いを考えながら毎日を生きて、元ちゃんハウスの活動を続けて行きたいと思います。
(2024年8月1日)
元ちゃんハウス 理事長
西村詠子
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