先日元ちゃんハウスで、第4火曜日恒例の交流会がありました。コロナ禍を機にオンラインも併用で開催しています。元ちゃんハウススタッフやがんに詳しい看護師さんたちとおしゃべりする会です。先日の交流会では、能登の豪雨について実際に現地に赴いたスタッフからの情報や、「今度、がん教育外部講師デビューします!」というワクワクの話題まで、いろいろなことをお話しました。今回の交流会ではその他に、「記念日反応」の話題が上がりました。「記念日反応」とは、
身近な人の死や災害などに直面した人が、その出来事のあった日の前後に、つらい経験を思い出して心身に不調をきたすこと。
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これまでに、理事長の日記でも登場したことがある言葉ですね。
この話題をふったのは私なのですが、なぜ交流会でみなさんと記念日反応についておしゃべりしたくなったかというと、さかのぼること先月。
実家の母に「お盆のお墓参り、今年はみんな何日に集まるの?」と連絡をしました。
例年お盆は、予定が合えば家族が集まる機会になっていたので、特に意識せずに例年通りに聞いたのですが、母からの返事は予想外のものでした。
みんなが集まっているときにまた地震が来たら…また何かあったら…と思うと怖い。
母がそう思うのも当然で、1月1日の能登地震発災時、七尾市で、両親や久しぶりに集まった家族みんなでこたつに入ってのんびりしているときにあの地震があったのです。大きな被害を受けなかった私でさえ、「これから先、お正月がおめでたい日ではなくなってしまった」と、年末年始は七尾の実家の家族には記念日反応が起こるかもしれないなと思いました。
でも、「家族が集まる」という場面にも敏感に反応する母の気持ちを推し量ることはできていませんでした。
お盆の母とのやり取りをきっかけにして、「記念日反応」のことや、これまで元ちゃんハウスで遺族の方や患者さんからお聞きしていた、「辛いことを思い出してしまう引き金になったこと」について思い返す機会が増えたので、一度交流会でみなさんとお話してみたいなと思ったのです。
交流会でのお話の中で印象的だったのは、歌にまつわるエピソードが多いことでした。
その季節に流れる歌、失った人が好きだった歌、治療の時期に流れていたドラマの主題歌など…ふいにその歌がテレビや車のラジオから流れてくると思い出す、同じ歌手の別の歌を聞くだけでも反応してしまう、というお話でした。
記念日反応や辛いことを思い出したときの対応として、教科書的には「誰にでも起こりうる反応であることをあらかじめ知っておく、反応が起こったときの対応を知っておく(リラックス方法、話を聞いてもらう等)」とありますが、交流会では更に教えてもらいました。
私の母の場合には、家族だんらんの時間に地震が起きたという事実は変えられないけど、「家族が集まることでまた怖いことが起こってしまう。」という考えや意味づけは変えることができる。震災以前に積み重ねてきた家族の時間が楽しかったということも事実なので、また家族で集まって楽しい時間を実感する中で、考えや意味づけを徐々に改めることができるといいのでは、ということです。
交流会では、スタッフやがんに詳しい看護師さんが患者さんからの質問に答えることも多いですが、質問がうまくまとまっていなくても「最近こんなことがあって」としゃべってみると、参加者のみなさんが経験談や知識を教えてくれます。
そして改めて、元ちゃんハウスの交流会は、お互いを思いやる温かい時間が流れていることを感じました。
(2024年9月26日)
元ちゃんハウス 看護師
毛利葉月
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