「Ars longa vita brevis(アース ロンガ、ビタ ブレービス)」はラテン語で
芸術は長く、人生は短し
という意味だそうです。そもそもは人の命は短いけれど、優れた芸術作品は人の死後も生き続ける。
この言葉は、古代ギリシアの医学の父とされるヒポクラテスの格言で、医学を修行するのには長い年月を必要とするけれども、人生は短いのであるから、怠らずに勉強せよと若い医学生を激励した句であるそうです。また、ゲーテの著書「ファウスト」でも知られていますし、夏目漱石の「こころ」の見返し部分には、この言葉の朱印がされているそうです。
私が聞いたのは、中咽頭がん、更に直腸がん、そして肺転移とずっと闘病された坂本龍一さんが亡くなった時で、坂本さんが好んだ一節として紹介されていました。
私は勝手にこの言葉から夫を想像しています。医師であった夫は58歳という短い?人生でしたが医師として最後まで懸命に生きたと思いますし、元ちゃんハウスを遺していったのですから。そんなに大げさなことでもないのですが、その元ちゃんハウスで夫や患者さんが過ごした時間は確かなものですし、元気になってもならなくても、その方々と過ごした時間は私たちにとっても大切なものですから。
そして、その元ちゃんハウスはギャラリーも持っているのです。
元ちゃんハウス2階のギャラリーケアリングでは作品が生まれ、来館された人は癒され、少しでも病気のことを忘れられる・・。作品展は終わっても、スマホの中の写真としてだけでなく、心の中にもずっと残っていきます。
ギャラリーケアリングでは、昨年12月8日からは岩井美佳さんの作品展。29日は大人から子供が参加したワークショップ。講師の先生のお子さんも参加で絵を描き終えた後は走っていました(笑)
そして1月は金沢美術工芸大学大院生 川西佑佳さんの作品展でした。
ギャラリーは天井も床も壁も真っ白で、何もないと浮遊感を感じます。置かれる作品によってまったく違う空間になります。川西佑佳さんのインスタレーションでは、床も壁も天井まで使って青色の世界でした。そしてこの作品展がまた次の作品に繋がるそうです。
この期間中に元ちゃんハウスに来た方も見学したり、川西さんと作品の意味や今までの作品についてお話したり、繰り返し来て制作の進展を楽しんだり・・いろいろいらっしゃいました。確実にご自分のお仕事や病気の事を気にしない時間を過ごしていましたし、言葉にしなくても絶対、何かを持ち帰られているように思いました。このあと、川西佑佳さんには、3月8日の午前中に石川県立図書館のだんだん広場で開く交流会(今、企画を練っております。もうすぐお知らせできるのでお楽しみに!)もお手伝いいただく予定です。
そしてギャラリーケアリングはこの後も展覧会やワークショップを開催していきます。他に、元ちゃんハウスのプログラムもしますし、地域の方の集まりにも使っていただくことも考えています。
追記
今年は6月27日から29日に第72回日本小児保健協会学術集会が開催されます。
そこで、元ちゃんハウスアート部の髙橋 律子さん(NPOひいなアクション 代表)と合同でワークショップを行います。
能登半島地震:子どもたちのケアをアートから
~手をうごかすことで 語る・つながるワークショップ「わたしのにわ みんなのにわ」~
こちらもお楽しみに!
(2025年1月6日)
元ちゃんハウス 理事長
西村詠子
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